あなたに合ったFIREはどれ? タイプ別特徴と必要な資産、計画の立て方
早期リタイア、すなわちFIRE(Financial Independence, Retire Early)は、経済的自立を達成し、早期に労働収入からのリタイアを目指すライフスタイルです。一口にFIREと言っても、その内容は多様であり、目指す生活水準や価値観によっていくつかの主要なタイプに分けられます。
これらのタイプを理解することは、ご自身のFIRE目標を具体的に設定し、より実現可能な計画を立てる上で非常に重要です。ここでは、代表的なFIREのタイプとその特徴、必要とされる資産の目安、そして計画を立てる上でのポイントについて解説します。
FIREの主なタイプとその特徴
FIREは、リタイア後の年間支出水準や、リタイア後も何らかの形で収入を得るか否かによって、いくつかのタイプに分類できます。
Lean FIRE(リーンFIRE)
- 特徴: 生活コストを極限まで抑え、ミニマリスト的な生活を送ることで早期リタイアを実現するタイプです。住居費や食費、娯楽費などを大幅に削減し、必要最低限の支出で生活することを前提とします。
- メリット: 必要とされる資産目標額が比較的少なく済むため、より早期のFIRE達成を目指しやすい点です。
- デメリット: 予期せぬ大きな出費やインフレに対して脆弱になるリスクがあります。また、生活水準を大幅に落とす必要があるため、すべての方に適しているわけではありません。
- 必要な資産の目安: 年間支出の25倍を資産目標とする「4%ルール」を基準とした場合、年間支出を例えば300万円程度に抑えるならば、目標資産は約7,500万円となります。
Barista FIRE(バリスタFIRE)
- 特徴: 完全には労働を辞めず、生活費の一部または全てを賄うためのゆるやかな労働(パートタイム、フリーランスなど)を継続するタイプです。好きな仕事やストレスの少ない仕事を選び、労働時間を減らしつつ、不足する生活費を資産運用からの収入で補います。
- メリット: 完全リタイアに比べて必要な資産目標額が少なくて済む場合が多く、FIREへのハードルを下げることができます。また、社会との繋がりを保ちやすく、仕事による収入があることで資産取り崩しのプレッシャーを軽減できます。
- デメリット: FIRE後も労働収入に依存するため、労働が困難になった場合のリスクがあります。また、理想の働き方を見つけるのに時間がかかることもあります。
- 必要な資産の目安: 例えば、年間支出が500万円でも、労働収入で年間200万円を得られるならば、資産運用からの収入で賄うべきは年間300万円となります。この場合、目標資産は300万円の25倍で約7,500万円となり、完全な資産収入で年間500万円を賄う場合の1億2,500万円よりも少なく済む可能性があります。
Fat FIRE(ファットFIRE)
- 特徴: FIRE前と同等か、それ以上の豊かな生活をリタイア後も維持することを目指すタイプです。高水準の年間支出を前提とするため、必要とされる資産目標額は最も高くなります。
- メリット: リタイア後も生活水準を大きく変える必要がなく、趣味や旅行など、自由な時間を贅沢に使うことができます。
- デメリット: 達成難易度が最も高く、多額の資産形成に長い時間と高い所得・貯蓄率が求められます。計画の途中で目標を変更せざるを得なくなる可能性も高まります。
- 必要な資産の目安: 年間支出が例えば800万円かかる生活を目指すならば、目標資産は800万円の25倍で約2億円となります。
(※)上記の必要な資産の目安は、あくまで「4%ルール」に基づいた一般的な例示です。実際の計画においては、インフレ率、運用利回り、税金、社会保険料などを考慮した、より詳細なシミュレーションが必要です。
タイプ別の目標設定と計画のポイント
ご自身がどのFIREタイプを目指すかを考える際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。
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現在の生活スタイルと将来の希望:
- 現在の年間支出はいくらですか?そこから、リタイア後にどのような生活を送りたいか(生活水準、趣味、旅行、住居など)を具体的に想像し、必要な年間支出額を見積もります。この見積もり額が、どのFIREタイプに近いかを判断する第一歩となります。
- 「早期リタイア後の生活費の見積もりと持続可能な支出管理」の記事も参考に、詳細な支出項目を洗い出してみましょう。
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許容できるリスクと柔軟性:
- 経済的な不確実性(市場の変動、インフレなど)に対して、どの程度のリスクを許容できますか?Lean FIREはリスク耐性が低い傾向にあり、Fat FIREは目標達成の難易度というリスクがあります。Barista FIREは労働収入でリスクを分散できますが、労働の不確実性というリスクも伴います。
- 計画にどの程度の柔軟性を持たせられるか(例:支出を調整できるか、必要に応じて働くことを選択できるか)も考慮します。
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家族との将来設計:
- 配偶者や子どもがいる場合、彼らのライフイベント(教育、結婚、独立など)や将来の希望も考慮に入れる必要があります。FIREは個人の目標だけでなく、家族全体のライフプランと整合性が取れていることが重要です。「家族と共有する早期リタイア計画:将来を見据えた話し合いの進め方」の記事も参照してください。
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資産目標額の算出:
- 目指すFIREタイプで想定される年間支出額が定まったら、それを基に必要な資産目標額を具体的に算出します。「早期リタイアに必要な資産目標額の算出と計画への組み込み方」の記事で解説されている計算方法などを活用します。
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計画の柔軟な見直し:
- 一度目標タイプと資産目標額を設定しても、経済状況やご自身の価値観は変化する可能性があります。計画は定期的に見直し、必要に応じて軌道修正を行うことが、FIRE達成への道筋をより確かなものにします。「FIRE計画の進捗確認と軌道修正:目標達成のための見直し方法」の記事を参考に、定期的なレビューの仕組みを取り入れると良いでしょう。
まとめ
FIREには、生活水準や労働の有無によっていくつかのタイプが存在します。Lean FIRE、Barista FIRE、Fat FIREなど、それぞれの特徴を理解することは、ご自身の価値観や現在の状況に基づいた現実的なFIRE目標を設定する上で不可欠です。
ご自身に合ったFIREタイプを見つけるためには、将来の生活スタイル、必要な年間支出額、許容できるリスク、そして家族を含めたライフプランを総合的に考慮する必要があります。明確な目標タイプを設定することで、具体的な資産目標額の算出や、その後の資産運用・貯蓄計画をより具体的に進めることができます。
どのタイプを目指すにしても、計画は柔軟に見直し、経済状況やご自身の変化に合わせて調整していく姿勢が大切です。ご自身の理想とする早期リタイアの形を明確にし、計画的な一歩を踏み出しましょう。